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執筆者の写真デボラ・デラックス

聖カテリーナ教会part2

処女厨が超えた一線今もなお☆

聖カテリーナ教会のもう一人の看板芸人(てかこっちのがメイン)、ヒエロニムスっていいます!


彼はローマ帝国でキリスト教が国教化された時代に生きた人です。


でも当時、今のように誰でも聖書が読めたかというと…ざっくり言うと旧約はヘブライ語、新約はギリシャ語で書かれていますが、ローマ帝国の人々は一部のインテリを除いてはギリシャ語は読めませんし、ヘブライ語に至っては言わずもがな、、、


そんな時代に、ヒエロニムスは聖書を当時ローマ帝国で日常的に話されていたラテン語に訳して、誰でも読めるようにしたんですねー☆


あ、でも、ヒエロニムス以前にもラテン語訳はあるにはあったんです。でも、「コレ」っていう決定版がなかったんです。で、ヒエロニムスは皇帝ダマスス1世の意を受けて翻訳しなおすんですね。


これが、「ウルガタ訳」として後世に受け継がれて…いません。まだ先があります。


パトロンであるダマスス1世が亡くなった後、ヒエロニムスはわざわざベツレヘムに引っ越し、もっかい聖書の翻訳をし直すんです…???


なんでやねーん!なんで引っ越すねーん!なんでそんな金あんねーん!


色々気になりますね。まずは「なんでやねーん!」「なんで引っ越すねーん!」の、公式版バージョンについて一通り述べましょう。あくまで、「公式版」ですよ (^_-)-☆


前述の通り、旧約はヘブライ語、新約はギリシャ語で書かれています。でも、彼がダマスス1世のもとで翻訳を手掛けた時にベースにしたのは全編ギリシャ語の「七十人訳」…旧約部分が既に翻訳済みのものだったんです。旧約については二重翻訳になっていました。


やっぱ、原語に当たんなきゃ駄目よねーという、ごく当たり前の感覚なんですが、これが、物議を醸すことになりまして。と、いうのは、当時既に「七十人訳」がオーソドックスなものと見做されていたから。


加えて時代はローマ帝国が東西に分裂した直後。西ローマ教会に所属するヒエロニムスがヘブライ語直訳の旧約聖書なんて作ったら…。ギリシャ語を重んじる東ローマの教会と、ラテン語ユーザーの西ローマの教会との間に認識のずれが起きるでしょ、と心配されたんです。


「告白」を書いた超有名な教父、かのアウグスティヌスも、ヘブライ語からの直訳には反対した位ですから。


でもヒエロニムスはめげずにベツレヘムに渡り翻訳を続け、ここに目出度く「ウルガタ訳」が完成します。これ、最終的にはカトリック教会で正典として採用され、日本語の聖書もこれをベースにしています。


ちなみに、ウルガタとは大衆とか民衆という意味。ヒエロニムスは、聖書のテキストデータのアクセス権をローマ帝国内に広く開放した、といえるでしょう。


聖カテリーナ教会の地下には、ヒエロニムスが翻訳に取り組んだとされる場所が残ってます!もろ洞窟って感じでデスクワークができるような場所には見えませんが・・・ちなみにキャッチのステンドグラスは、ヒエロニムスが天使に「頑張って訳しな」と励まされている所だそうです。

さて、次は「なんでそんな金あんねーん!」についてご説明します。んで、金の話するとなると流れで、「なんでやねーん!」「なんで引っ越すねーん!」の「非公式版」についても言及することになりますね( ̄▽ ̄)


ヒエロニムス、別にヨルダン川で砂金とか取ってたわけじゃありません。オリーブの先物取引で当てたわけでも、ありません。


別のパトロンが、いました。


聖カテリーナ教会にあるヒエロニムスの銅像の足元にある髑髏…これが、そのパトロンさんです。


パウラと言います。女性…です。

さて!ここからは全力アサヒ芸能モード入りますよ~♪


パウラさん、裕福なローマ貴族の出の未亡人だったんですが、キリスト教にどっぷりハマりました。同じくローマ貴族の女性のお仲間と共にヒエロニムスに私淑し、行動を共にするんですね。


彼らはめちゃくちゃ禁欲的な生活を送ります。パウラに至っては夫の生存中に既に関係を断っていたとか。ただ…性的に、だけならよかったのですが、生活全般にわたって禁欲してしまって、、、少し行き過ぎたのでしょうね。


パウラの娘の一人、ブレシラは親に付き合ってストイック極まりない生活を送った結果、亡くなってしまうんです。拒食症とか、なんですかねえ。きっと。


これが、ローマの人々を激怒させるんですね。わけわかんない宗教にはまって子供に無理させた挙句に死なせてしまうなんて…と。加えて、ヒエロニムスとパウラが出来ているという噂まで立てられました。日頃禁欲しろって言っているヒエロニムスは、言行不一致な奴として余計叩かれます。


ベツレヘムには、早い話が逃げてきたんです。


それにしても、処女であることそれ自体に価値を見出すって、キリスト教独特な気がします。性的放縦や不貞を非難するのはどの宗教でも一緒だと思いますけど、母体のユダヤ教では、基本的に処女はみっともない、産めよ増やせよ地に満ちよ、って価値観ですよね。


日本でも芸者の水揚げとかありますが、あれも「初物」を「いただく」からありがたいのであって。プラトニックラブとか騎士道精神とかはキリスト教独特じゃないかなあ、面白いなあ…って思います。「無原罪の御宿り」のイエスの影響故の文化でしょうか、やっぱ。


ヒエロニムスとパウラの一線疑惑の真相については今更証明のしようもありません。でも、パウラはお金を出すだけでは無くて、ベツレヘムでヒエロニムスが建てた修道院の修道院長も務めていますし、翻訳のサポートもしています。


ヒエロニムスが翻訳をしたとされる部屋の中に、とっても色鮮やかなモザイクがあります。十字架の左隣がパウラです。

ヒエロニムスはパウラ亡き後、その骸骨を身近に置いて翻訳を進めたのだそうです。あの奇妙な銅像は二人の間の強いな絆を表しています。


まあ、一線を越えたんだか越えないんだかどうでも良いようなもんですが、かけがえのない同志ではあったのでしょう。二人は、聖カテリーナ教会の地下のどこかに埋葬されています。


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