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執筆者の写真デボラ・デラックス

ザアカイの木

救いの木…釘を打たれた外来種

はーい。テルエッスルタンから巡り巡って戻ってきましたエリコです。こちらでは、一万年前とか四千年前とかでは無くて、現在のエリコについてもちょっとご説明しますね。


エリコの町は、現在ヨルダン川西岸地区にあります。ご存じの通り、ヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府とイスラエル軍がその覇権を争っており、行政権と警察権についてどちらが実権を握っているかでA地区、B地区、C地区に分かれています。


A地区はパレスチナ自治政府が行政権、警察権共に握っている地区ですが、全体の17%程に過ぎません。エリコはそのレアなA地区に所属しています。


危険なイメージの強いヨルダン川西岸地区ですが、エリコの町はパレスチナ自治政府のコントロールが効いている=イスラエル軍とのドンパチは少ない、のか、とても明るい雰囲気でした。昼間、バスの中から見た印象だけで言ってますけど。


街の中はアラビア語一色、女性はヒジャブを被り、店舗の看板は極彩色で派手。加えてタクシーは皆真っ黄色…控えめな雰囲気のユダヤ人居住区とは明らかに違います。


車が多くて、お店には大量のフルーツや香辛料が売られていて、昭和な感じの駄菓子屋さんとか雑貨屋さんが多い。そこでおっちゃんがのーんびり商売…。

エリコはかのエジプトよりまだ古い、一万年の歴史を持つ町です。当然遺跡も多く、加えて美容にイイ温泉(死海w)付き!自治政府のアッバス大統領、これを利用しない手はないとエリコの町を観光地として絶賛売り出し中なんです!


そこで使われたのが、この「ザアカイの木」れす☆

ザアカイは徴税人のヘッド。当時の徴税人はユダヤ人から巻き上げた税金をピンハネしてローマに渡してました。当然ユダヤ人からは嫌われます。その嫌われ者の彼が噂の彼を一目見ようとしたんですが、ザアカイは小柄で…。


人混みの中からイエスを見るのは無理なので、いちじく桑の木に登ってスタンバってたんです。そしたら、当のイエスが「今日お前んとこに泊まるし」って爆弾発言をかましたんです。


ユダヤ人の間では家に泊まったり食事一緒にするっていうのは信頼の証ですからね。なんで取税人のヘッドの家になんか泊まるのよ、と。


でも友達のいないザアカイは当然嬉しいわけです。で、すっかりイエスのファンになっちゃった、というハートフルなお話でございます。


で、エリコの町の中心部にあるこのいちじく桑の木…これこそがアノ木だということになりまして。一躍脚光を浴びたんです。


ついこないだまでただの古くてデカい木だったらしいですけど。いやまあ、今でもただの古くてデカい木なんですけどね。


2010年のエリコの町10,000周年(!)記念祭には、この木が目玉とされ、近くには博物館まで建てられたとか。もっとも、近くにあるギリシャ正教の教会にも、デカい切り株が「ザアカイの木」として保存されてるみたいですよ。


どっちがホンモノかは分かんないですけどね。どっちもニセモノかも知んないですしね。


ところで。


ザアカイが登ったのはなんだって「いちじく桑」なんでしょうね。エリコの町はなつめやしの木の町、なんて言われてますし、緑豊かで木なんか幾らでも生えているのに。


これ、結構いろんな理由が考えられるそうで…。


一つは、小柄なザアカイでも登りやすかったから。低い位置から枝が生えまくるそうです。当時のユダヤ人男性の平均身長は大体160㎝位だったそうで、その中で小柄と言うと155㎝以下でしょうか。まあ、登れる木は限られてきますね。


ただし、今のザアカイの木はとてもかくても155㎝以下の人間が登れるような高さではありませんが…。ぽかーんと見上げるレベルの巨木です。いちじく桑の高さはMAX15mと言われますが、イメージもっと大きいような気がしました。


ローマ帝国の徴税人の頭であるザアカイのイメージと重なるから、なんて説もあります。いちじく桑の正式名称は「エジプトイチジク」。もともとエジプトで広く用いられた木で、ユダヤ人にとっては馴染みの薄い外来種です。アウトサイダー同士ということですね。


新約時代のローマ、旧約時代のエジプト…。たしかに、ユダヤ人にとっては似たようなアレな感じのザ・大帝国…。


あとはやはり、聖書的な意味ですね。いちじく桑、という以上はいちじくと関係あるのでは?と思いますが、その通りです。同じクワ科イチジク属です。で、聖書でいちじくというと「イスラエルの民」の比喩とされます。


エルサレムに到着したイエスが、いちじくの実が無いのを見て枯らせてしまった、なんて話がありましたよね。これは空腹故のご乱心では無くて、イスラエルの民の堕落ぶりと後の神殿の崩壊を暗示していると言われます。


あと、聖書的な意味といえばもう一つ。こちら、いちじく桑の実なんですけどねえ・・・

※wikipedia 「エジプトイチジク」より引用。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B8%E3%83%97%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B8%E3%82%AF


いちじく桑の実は食べられるのですが、基本、貧しい人のための食物だったとか。と、いうのも、食用にするためには木の上にある熟す前の状態の時に、尖ったもので一つひとつ穴を開けなくてはいけないからです。早い話が他に喰うもん無い人が仕方なく喰うようなもんなんですよ。


確かに、写真的にもあんま美味しくなさそうですよね。いちじくと比べると。それに…


尖ったもので穴開けられるって、なんか、思い出しません?聖書的な文脈で。


エリコはイスラエル北部からエルサレムに行く時に必ず通る交通の要所でした。ザアカイのエピソードは、イエスがいよいよエルサレムに入城するその旅路での出来事です。


ザアカイが登ったいちじく桑の木は、いちじくの木と共にエルサレム入城後の一連の出来事-死刑を宣告され生きたまま十字架の上に釘打たれる-を暗示している、とも考えられるのです。


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