グローバル化!動植綵絵ビザンツVer.
※wikipedia 「パンと魚の奇跡の教会」より引用。
ガリラヤ湖畔に活動拠点を定め、病人を癒したり悪霊をお祓いしたり果ては死人を生き返らせたりと大活躍のイエス。ある日のライブには各地から5000人以上のお客さんが集まり、しかも夕方まで続きました。そこでイエスは夕飯を振舞おうとします。
弟子たちに食べ物を探させますが、子供が弁当に持ってきたパン5つと魚2匹しかありません。でもイエスは構わずその5つのパンと2匹の魚を配り始めます。すると5000人以上のお客は何故か満腹になり、しかも残りのパンくずは籠12個分になりました…
パンと魚の奇跡、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4つの福音書全てに掲載されている(かなりレアケースかと…)超有名なお話です。
そのお話を記念してこの教会が作られました。
この教会も、スペインの巡礼尼さんエゲリアの記録に残っています。4世紀には既に、パンと魚の増加の奇跡を記念して小さい教会が建てられていたようです。イエスがパンと魚を置いたとされる岩が置いてあり、巡礼者は記念に削り取っていたとか。
今でも中央の祭壇の下には岩があります。でも、削り取れないようにロープ張ってあって近くに寄れません。しかも私が行った時には邪魔くさいクリスマスの飾りがあって・・・岩を削るつもりはありませんでしたが、冗談抜きでこのおもちゃは片付けようと思いましたね。
その後、5世紀には恐らくは巡礼者が増えたことから拡張工事が行われました。その時に作られたお宝は、今やイエスがパンと魚を置いた岩以上の観光資源となっています。動植物を描いた、素晴らしいモザイク画です。
件の祭壇の下に、一番有名なパンと魚を描いたモザイク画があります。キャッチの写真にあるものです。観光ガイドに必ず出てきますね。この写真はモロ真上から撮ってますけど、正直観光客はこんな近くに寄れないです。どうやって撮ったんだろう・・・
図柄はとっても精緻で可愛いです。図柄をみれば、大体その動物なり食物なりの種がわかってしまうそうで。当時のガリラヤ湖周辺にいた動植物についての資料とも言えます。相当な技量のある職人が作ったそうです。
ビザンチン時代のモザイクと修復されたものの両方が混在しているみたいなので、ガイドさんに「ビザンチン時代のもの」と教えていただいたものをご紹介。
聖書にも出てくる岩だぬき。旧約聖書のレビ記で落とされていますね。ユダヤ教の食物規定では「蹄が割れててかつ反芻する」ものしか食べてはいけない、とされているのですが、岩だぬきは「反芻するけど蹄が分かれていないから汚れている」とのこと。
この岩だぬき、ちゃんと立体感が出るようにタイルの色を使い分けてますよね。芸細かっ!
ちなみにこちらがリアル岩だぬき。現代ではハイラックスと呼ばれる動物ですね。動物園とかで結構人気者じゃないかなあと思うのですが。この子たち、喰われないせいかまだイスラエルにも生息しているとのこと。コツメカワウソみたいに密輸されないか心配です!
※wikipedia「ハイラックス」より引用。Kuribo氏による撮影。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9
見つめ合うあひるも、可愛いです。なんだかここのモザイクは鳥獣戯画とか動植綵絵とかそんな感じです。精緻なんだけど、キャラクターっぽいというか漫画っぽいというか。自然そのものを写し取ったっていうより、人間が勝手に感情移入してストーリーを持たせて再構成してる感じです。
モーセの十戒に「あなたはいかなる像も造ってはならない。(旧約聖書、新共同訳、出エジプト記20章4節)」とあります。マグダラのシナゴーグ跡のモザイクみたいに、イスラエルアートはイスラム教と同様抽象的なものが普通だと思っていたので、ちょっと意外…。
こちらも、ご覧くださいませ。
※See the Holy Land 「Tabgha」より引用。
イスラエルには無い、ナイル川流域の蓮のモチーフが使われています。これ、ヘレニズム文化の影響によるとのことです。
要は、辺境の国イスラエルもグローバル化の波、、、この場合は多神教文化の影響に晒された、ということなんでしょうね。
曲線の使い方がとても上手いし、構図の巧みさにも目を奪われます。凄いなあ・・・
でもこの素晴らしいアートも、7世紀にササン朝ペルシアによって教会が破壊されて以来、1300年以上地下に眠ることに…遺跡が再度発掘されたのが1932年、今の教会が建てられたのは1982年。ごく、最近のことなんです。
教会の外にも、お宝があります。イエスの時代にまさしく使われていた黒玄武岩製オリーブオイル製造機です。直径1m以上はあったかな、と記憶しています。
ところで、イエスは「しかし、わたしを信じるこれらの小さな者の一人をつまずかせる者は、大きな石臼を首に懸けられて、深い海に沈められる方がましである(新約聖書、新共同訳、マタイによる福音書18章6節)」などと物騒なことを言っています。
ここに出てくる「大きな石臼」は、実はこのごついオリーブオイル製造機なのだとか。絶対に浮き上がらないよう確実に殺っちまえってことですよね。おお、怖わ…!
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