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執筆者の写真デボラ・デラックス

テルエッスルタンpart1

エリコにて神と人とが出会う場所

ええっと、イスラエル巡礼の旅は…そうですね、一万年前からスタートします。二千年前のイエスキリストはおろかざっくり四千年前のアブラハムの時代ですら、まだ大分間がありますよ~!


そのスタート地点は、イスラエルはヨルダン川西岸、いわゆるパレスチナ自治区にあるエリコです。テルエッスルタンという遺跡に一万年前の町の痕跡が残っているんです。


と、いっても、えらい荒涼としてますねー。いきなり中東かいって感じで飛ばしてますねえ。こんなとこに何故町⁉と思うでしょうが、意外や意外、ここ、水が大層豊かなんです。オアシスいっぱいありまして。じゃん。

有名どころではエリシャの泉、なんてのがあります。旧約聖書は列王記下で、紀元前9世紀ごろの預言者エリシャが塩投げ込んで清めた、なんてエピソードが語られています。この泉、今でも現役で使われています。とっても綺麗です!


この、水が豊か、というのはエリコという町を語る上で大きなキーとなります。覚えといてくださいね。


話もどして。


世界最古の町、一万年前からある町、と言われても正直イメージ湧かなくないですか?

一万年前って、なんなんでしょうね。


エリコの町を理解するには、まずは中学校レベルの世界史をおさらいしなくちゃいけなくて(;^_^A


世界史の教科書のしょっぱなに出てくる「メソポタミア文明」、これですら大体5500年前位です。続いて出てくる「エジプト文明」や「中華文明」が5,000年位前。エリコはその倍古いという…。ますますよく分からないですね。


ナントカ文明を持ち出してもらちがあきません。視点を変えましょう。


恐竜がいたのは…6,600万年前です。あ、、、これじゃ遡り過ぎですね。それでは旧石器時代は…200万年前からです。うーん、これでもまた早すぎますね。


では今度は現生人類、ホモサピエンスで行ってみましょうか。こちらは、誕生したのが20万年前になります。石器云々で言うと…おっと、まだ旧石器時代なんですね。旧石器時代長いですねえ。てか、新石器時代って何年前から始まるんでしょうね?


その答えは…一万年前です!ここでやっと、エリコの誕生と重なりました!


旧石器時代と新石器時代の違いは何でしょう。石器で言えば研磨されているかいないか、ですが、一番大きな違いは狩猟中心か農耕中心か、です。


新石器時代は氷河期の終わりと重なります。効率良くカロリーが取れる大型哺乳類、例えばマンモスとか、が、絶滅しちゃいまして、狩猟に頼れなくなったんです。でもその代わり暖かくはなりました。じゃあ炭水化物いっとく?ということで農耕スタートです。


農耕に従事したら、当然人は水が豊かな土地に定住しなくてはいけません。この、定住ってのが人類史上凄く大きいことなんですね。て、いうのも、宗教の誕生と深く関わってまして。


宗教の誕生、といっても、そんなにテツガク的なややこしい話ではないんですよ。むしろかなり単純な話。


ぶっちゃけ定住しなければ、人が死んで蛆湧いてケガレそのものって感じで腐っていっても、自分が移動すればおけです。無かったことにできます。でも、定住するとなると埋葬したり鎮めたりしないわけには…。当時は特殊清掃業者とかいませんから。


んで、宗教誕生。


あと、宗教以外にも生まれたものがあります。穀物は、自分が食べる分以上作っても保存がききますよね。そして、この余剰農作物はお金の代替になります。お金の代替があれば、全員が全員農耕に従事しなくてもいいわけですから、特殊な技能のある者は食物生産以外の仕事に従事することができます。


テルエッスルタンにある、このよく分からないデカい建造物をご覧ください。宗教施設とか見張り塔とか色々言われていますが、これが何なのかは、いまだに正体不明です。

でも、確実に言えることがあります。これだけのものを作るには、大勢の人間をかき集めなくてはなりません。そして、工事中食わせておかなくてはいけません。加えて、土木工事の技術も必要…要は、余剰農作物による専業化と階級化が進んでいたということです。


そう考えると、一万年前ってのは、人類史上物凄く大きなターニングポイントなわけです。


人類が狩猟生活を送っていた頃は、肉や魚や木の実といった神が与えてくれる恵みに無垢に頼っていたんでしょうね。てか、神なんて意識してなかったかも。


農耕が始まって定住することにより、人間は自ら土地を耕し、水路を整え、自分の意志で自然をコントロールすることになります。勿論、そうした人間の努力なんて異常気象とか伝染病といった「神様の創造の御業」の前には儚いもんです。


どんなに努力しても餓死や病死で目の前に屍累々ってなことも、あったでしょうね。

加えて定住してますから、その屍からは簡単には逃れられなかったでしょうね。


定住によって専業化と階級化が進んだことに加え、人は「死」に直面し、その恐怖心から「人間」と「神」を対立項として捉えるようになったんです。


限られた命を持つ存在として、「自分は何を成し遂げるために生まれてきたのか」というアイデンティティを求める意識や、「アイツより俺の方が上だし」という競争意識が、生まれます。


思うに。


神に守られて安心しきって暮らしていたアダムとイブが、知恵の実食って前隠すようになったのは…言い換えれば自意識というものを持つようになったのは、きっと新石器時代だったんじゃないですかね。


一万年前、エリコの町が出来たころに、我々はエデンの園を蹴り出されたのですよ。


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