捧げます!自分が自分であるために
さて、ここまで読めばご想像がつくでしょうが…エッセネ派、特にこのクムラン教団の面々は凄く禁欲的で、宗教的な意味で超潔癖でした。この世的な汚れを徹底的に洗い清めて、私有財産を持たず質素な生活に甘んじました。服やサンダルは擦り切れるまで使ったとか。
そして必要最低限の物しか得られない荒野の中で、ひたすら祈りと写本、聖書の学びに身を捧げました。
勿論、入会のハードルもめっちゃ高かったです!上の写真は、エルサレムにある死海文書館です。ここに死海文書が保管されていますが、死海文書には聖書だけじゃなくて当時の生活上のルールが事細かに記載された文書もあるんですよ。そこから、ちょっとチラ見…
まずは監督者による一次審査があって、パスすると講義を受けさせられます。その後二次審査があって、一年間準会員の扱い。その後第三次審査があって私有財産はここで没収です。でもまだゴールじゃないです。
二年後に、四次審査!が、あるんです。そこでやっと正式な会員になれます。かかる年数も半端ないし、審査に落ちる人だって多々いたかと…。司法試験や医師免許より難しそうですね。
エッセネ派となるとここまで厳しくは無かったようですが、他の宗派に比べると宗教的な純粋さ、清浄さをひたすら追い求め、世俗的な権力とは一線を引いていた、、、と基本路線は同じみたいです。
まあ、こういった宗派はメジャーにはなりえないな、とは思います。人を選びますしね。てか、そもそもメジャー狙ってないし。エリート路線なんですよ。宗教的エリート。現代ならカルト認定されかねないやつです。悪いけど。
ずっとこんなとこに籠ってんですからね。マトモな神経の持ち主なら、気が遠くなります。
このけったいな教団、なにゆえ生まれたのでしょうか。以下、歴史小話です。
BC198年、ユダヤはセレウコス朝シリアの支配下に入ります。セレウコス朝シリアはアレクサンダー大王のマケドニア王国が分裂してできた国家ですが、当初は、ユダヤに対して宗教的・経済的な優遇措置を講じていました。ユダヤ教徒達も親シリアの姿勢を示しました。
ですが、ユダヤ教徒内部で分裂が起きます。ユダヤ教大祭司オニアス3世とそれに次ぐ地位である神殿守衛隊長のシモンとの間で対立が生じました。大祭司オニアス3世と神殿守衛隊長シモンは、歴代のシリア王のバックアップを得るべくヘレニズム化政策に迎合し、お互い贈賄合戦を始めました。
競り勝ったのは、神殿守衛隊長シモンの方です。
神殿守衛隊長シモンの弟、メネラオスはシリア王アンティオコス4世により大祭司に任命されます。ただ問題が…彼、正当な大祭司の家系に属していないんです(大祭司になれるのはダヴィデ王の子孫だけ、ってことになってるのね)。
なのに、外国人であるシリア王が勝手に「ういやつ…♡」ってやっちゃって…当然、ユダヤ人の反シリア感情は一気に高まります。
そんな時、アンティオコス4世の死亡の噂が流れます。神殿守衛隊長シモン&メネラオスに追放された大祭司オニアス3世の弟ヤソンが、これを政権奪回の好機と見て挙兵したんです。んで、アンティオコス4世は怒り狂ってユダヤ教の信仰を禁止してしまいました。
その後BC167年、ハスモン家の祭司マッタティアスはユダヤ教の信教の自由を取り戻すために反乱を起こします。マカベア戦争です。マカベア戦争は見事マッタティアス側の勝利となり、ユダヤ教は息を吹き返します。
※wikipedia「マカバイ戦争」より引用。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AB%E3%83%90%E3%82%A4%E6%88%A6%E4%BA%89
ちなみにこの時、マッタティアスに従うも安息日の教えをかたくなに守って、シリア軍の攻撃に抵抗することなく殺された人々がいました。彼らは、エッセネ派の源流の一つであると言われています。
ですが・・・
エッセネ派の祖先が命を懸けて守ったハスモン家。彼らはユダヤ教の伝統を忠実に守って暮らすと思いきや…なんと!
次第にアンティオコス4世時代の大祭司達と同じ行動を取り始めるんです( ゚д゚)
シリアのみならず、ローマやプトレマイオス朝エジプトを手玉に取り、外交策に溺れ、領土拡張に邁進します。そしてまたもや、正当な大祭司の家系でもないのにシリア王により大祭司に任命される、という珍事が起こります。ハスモン王朝の始まりです。
ハスモン王朝の支配下で、ユダヤ人社会は改めて自分達の信仰の在り方を見つめ直すことになりました。ユダヤ人社会では、神に対する正しい信仰の在り方を保つことが、そのまま民族の生き残りに直結すると考えられていました。
そして、「正しい」ユダヤ教の在り方を巡って宗教的な内部分裂が起こり、ファリサイ派、サドカイ派、エッセネ派、そしてクムラン教団が生まれます。
聖誕前夜…より、少し前の、出来事です。
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